映画監督・ドラマディレクター今井夏木さん 特別インタビュー

2006年、携帯電話のWebサイトに掲載された携帯小説「恋空-切ない恋物語」が、日本中の若者の共感を呼び一大ブームを引き起こしました。さらに、その作品があらゆる世代から支持されるきっかけなったのが、新垣結衣さん・三浦春馬さん主演の映画「恋空」の大ヒットでした。その演出を手がけたのは、これまで数々のテレビドラマを生み出してきたTBSディレクターの今井夏木さん。


その今井さんが3月7日に北京で行われた「J-meeting Beijing 2010」にご出演され、日本のポップカルチャーに関心を持つ中国の若者の前で講演を行いました。


今回心連心ではイベント終了後、今井さんに特別インタビューをお願いし、これまでのご活躍の軌跡や、映画版及びドラマ版「恋空」の制作秘話など、貴重なお話を伺う事ができました。


心連心

北京でのご講演お疲れ様でした!今井さんは、中国に行かれたのは今回が初めてだそうですね。


今井

はい、今回が初めてでした。実はTBSの社内にも中国の方はいらっしゃいますし、学生時代もキャンパスに中国の留学生は沢山いらしたのですが、私自身は中国の方と交流する機会はあまりありませんでした。ですからこれまではニュースなどを通して得た中国のイメージしか持っていませんでした。実際に自分の足で現地へ行き、中国の今を感じることができたのはとても良かったですね。


心連心

中国の映画やドラマはご覧になられますか?


今井

中国映画は良く見ています。特にチャン・イーモウの作品が好きで、彼の初期の作品からずっと見ています。スクリーンに映し出される中国の情景を観ると、どうしてこんなに鮮烈で美しい色が出せるんだろう?中国は日本より空気が新鮮だから、中国映画は鮮やかに発色するのかな?なんて思っていましたが・・・私が訪れた北京の空気は淀んでいました(笑) 中国映画といえば一般的に歴史物やアクション系が有名ですが、私は人々の何気ない生活をテーマにした作品に強く惹かれます。


今井夏木

心連心

映画「恋空」について伺います。この作品はご自身にとって初監督映画作品だということですが、どのような気持ちで撮影に臨まれたのでしょうか?


今井

これまで主にドラマの演出をやって来ましたが、初めて大好きな映画を監督するお話をいただいた時は、とても嬉しかったです。でも原作を読んでみると、センセーショナルな事件が立て続けに起こる携帯小説で、これを2時間にまとめて映画としてどう表現するか、とても悩みました。 そんな中、原作者さんと直接会ってお話しする機会があって、この「恋空」は彼女がとても大切にしている思いなのだということが、言葉少なに座っている彼女の佇まいから、ひしひしと伝わって来たんですね。その時、私は監督として「恋空」をそのまま受け入れて、彼女の思いを大切にしながら映画を作ろう、と覚悟が決まったんです。


心連心

大ヒットした映画の後、テレビドラマ版「恋空」も放映されましたね。


今井

映画で作り上げ、完結させてしまった「恋空」の世界観を、再度ドラマとして構築し直さなくてはならないということには、当初とまどいを感じました。が、やるからには、より良くしなければ、と当然思い、2時間の映画では描ききれなかった家族との関係を、ドラマでは、より深く描きました。 また、映画は主人公美嘉のナレーションで進めて行ったのですが、 ドラマでは恋人ヒロ目線のシーンも増やしてあります。それによって視聴者の皆さんには、ヒロの心情や葛藤をより深く感じ取っていただけたのではないかと思っています。


今井夏木

心連心

「恋空」は高校生を描いた作品ですが、今井さんご自身はどんな学生時代を過ごされたのでしょうか?


今井

私の学生時代は・・・とにかく遊んでいましたね(笑) 中学一年のときにNHK名古屋放送児童劇団に入り、「中学生日記」という番組に出演していました。その意味では、ドラマ制作にはかなり早い時期から関わっていたと言えるのでしょうか。大学では演劇を専攻しながら、小劇場などで役者としての活動を続けていました。


心連心

ご自身でも役者をされていたのですね!その後どのような経緯から、演出家の道を歩まれることとなったのでしょうか?


今井

役者の道は、大学3年の時、断念しました。客観的に自分を見て、主役になれる役者ではない、と悟ったからです。それまで親の脛をかじりっぱなしだったので、卒業後は働いて経済的にも自立したいと思い、就職活動を始めました。しかし第一志望の会社に、第一次書類審査の段階で落ちてしまったんですよ。その後マスコミ業界に絞って就職活動を続けていたある日、TBSのアナウンサー試験を受けに行ったのですが、面接官の方が「もしこの試験を通らなくても一般職員試験を受けにいらっしゃい」と声をかけてくださったんです。 そうして受けたTBSの一般試験で、思いがけず内定を頂いたのです。その後も少し出版社を受けたりしたのですが、TBSと縁があったんだと思い、入社を決めました。


心連心

これまで積み重ねてきた経験が、制作ディレクターとしての道を導いたのでしょうか。現在このお仕事に就いて、ご自身ではどう思われていますか。


今井

入社試験を受けている時から主張していましたが、入社後もドラマ制作がやりたいと訴え続け、最初に配属されたバラエティから一年後、ドラマに配属になりました。今でも常に乗り越えなければならない困難は、たくさんあります。 それは、どの業界でも同じですよね。 私たちの仕事、作品を世に出し観て頂くということは、皆さんに影響を与えるので大きな責任を伴います。その責任を全うするために、丁寧に作品を作るべく自分の自由な時間を犠牲にせざるを得ません。でも作品を皆で協力し一喜一憂しながら作り上げるのは、しんどいことも多いですが、その喜びも格別です。私は、とても贅沢な仕事に就けているなあ、と感じています。


心連心

このインタビューをご覧になっている心連心の読者の方々も、皆それぞれ将来に向けての想いがあると思います。最後にそんな日中の若者達にメッセージをいただけますか?


今井

若い皆さんには、なんといっても夢を持って欲しいです。それはつまり、具体的な目標やイメージを持ち続けること。夢や目標、イメージがなければ、流されて漠然と毎日を送ってしまい、どこにも辿り着けません。 自分がなりたい自分、こうありたいという姿を常に胸に描いて、前を向いて一歩一歩、 進んで行ってほしいと思います。

夢は、かなうんだよ。


今井夏木

■今井夏木さん プロフィール 

1971年7月16日生まれ、愛知県出身。1994年TBSテレビ入社。これまで演出を手がけてきた代表的な作品は、「3年B組金八先生」(99~00)、「Love Story」(01)、「高校教師」(03)、「ヤンキー母校に帰る」(03)、「オレンジデイズ」(04)、「H2~君といた日々」(05)、「タイヨウのうた」(06)、「3年B組金八先生」(07)、「恋空」(08)、「オルトロスの犬」(09)など。「Love Story」「オレンジデイズ」で映画「いま、会いにゆきます」「涙そうそう」の土井裕泰監督と共に演出を務めた経験を持ち、その実力が高く評価されている若手No.1女性ディレクター。尊敬する映画監督は、ヴイクトリアル・エリセ。映画「恋空」で映画監督デビューを果たす。2008年には、中国も参加しているアジア最大級のコンテンツアワード、TBS DigiCon6 の審査員も勤めた。



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