音楽家・久石譲氏インタビュー

■ インタビュー日時: 2009年1月16日


■ インタビュー場所: 久石氏事務所


■ 内 容: ※(久)・・・久石氏、(編)・・・メルマガ編集部



(編)

いま、久石さんは作曲家として音楽家として世界中で広くお名前を知られていますが、音楽を一生の仕事にしようと決められたのはいつ頃のことでしたか?またそれを選ばれたきっかけや理由を教えてください。


(久)

子供の頃から音楽をやりたい、音楽以外にやりたいことはないと思っていました。本当に幼稚園に入る前の幼いときから既に「音楽をやる」と決めていました。そして今でもその気持ちは変わっていません。


(編)

音楽以外の仕事をしてみたいと思われたことはありませんか。


(久)

やりたいことをやる・・・それが私の“仕事”と呼ばれるわけですが、「仕事=やりたいこと」ですから他の仕事をしてみたかったといったようなことは一切ありません。そういう発想自体、持ったことが無いですね。とにかく子供の頃から、音楽と映画、特に音楽が大好きでした。

久石譲氏

(編)

迷い無く進んでこられた音楽の道という意味で、ストレスは殆ど感じられないと考えてよいのでしょうか。


(久)

どのような種類のストレスなのかによりますが・・・実際の創作の過程について言うならば、それはストレスだらけです。物づくりというものはそういうものなのだと思います。


(編)

そのストレスはどのように解消されますか。やはり音楽によって解消するのでしょうか、それとも全く別のことをされたりするのでしょうか。


(久)

創作活動におけるストレスというものは、自分の頭のなかにあるイメージが上手く形に表せないときや自分の望んでいるものに届かないときに感じるものなので、それを解消したければ努力するしかありません・・・より深く思考を巡らせるとか、別の表現方法を探すとか。他のことで気を紛らわせることができるなら、それはストレスを感じるといってもまだ余裕がある状態なのではないでしょうか。 しかしそれもこれも、良い音楽をつくることができたときに感じる音楽家としての最上の喜びのための努力ですから、頑張るしかないですね。

(編)

音楽家として、或いは個人として一番幸せを感じられるのはどのようなときでしょうか。


(久)

やはり、曲ができたとき、何も無いところから一つの旋律といった形を生み出すことができたときはワクワクしますし音楽家としての幸せを感じます。


(編)

日常生活で気をつけていることはありますか。


(久)

私の創作活動は、たとえば映画音楽しかりですが、監督その他様々な人との共同作業で進めるものも多くあります。そのため、その様々な要望に応えられるよう常に自分を一定の、フラットな状態に保つことが必要だと考えていて、そのためにできるだけ毎日の生活を規則正しく、同じパターンで送れるようにしています。たくさんの仕事をキチンとこなしていく上で気分のムラは禁物です。


(編)

音楽とは直接的に人の心に働きかける極めて感性的なものだと思いますが、作曲の過程でそのことは意識されますか。


(久)

結果として生まれたものは芸術と呼ばれたりしますが、音楽とは音の連なりですから、作曲という行為は音を如何に組み立ててかいくか、極めて論理的な作業と言えます。もちろんその中に作り手の感性は入ってきますが、作業そのものは理詰めです。研究者がやることと同じなのではないかと思います。


(編)

そういえば理数系の研究者で音楽や芸術的な創作活動をされる方がいますね。


(久)

そうですね、理数系の中でも特に数学はひらめきやセンスが必要な学問と言われますので、論理性と創造性両方をもっている数学者と音楽家には通じるものがあるかもしれません。


(編)

中国には何度も行かれているようですが、お気に入りの食べ物はありますか?


(久)

中国料理はどれも美味しいですから、特にこれと決めず上海に行けば上海の料理を楽しみ、北京では北京料理を美味しく頂いています。敢えて言うならば、麻腐豆腐には少し拘りがあって、「究極の麻腐豆腐」にはまだ出会えていないような気がしています(笑)。お薦めのお店があったら教えてください。


(編)

海外でのお仕事も多いと思いますが、様々な国の人との共同作業で価値観の違いなどで難しさを感じたことはありますか。


(久)

美しい音楽、良い音楽をつくるという最終目標は共有していますので、方法論に違いはあっても目指すものが同じであれば大きなストレスを感じることはありません。ただ具体的な作業となると、その進め方、段取りに対する常識というか基準が違って驚くことは間々あります。ただこの辺りはスタッフに任せているので本当の大変さを知ってるのはスタッフたちかもしれません。


(編)

音楽以外で趣味はお持ちですか。


(久)

子供の頃に好きだったのは音楽を聴くことと映画を観ることでしたが、今はこれを“仕事”としていますから、仕事以外の趣味と聞かれるとこれと言って無いですね。ジムに行ったりゴルフをしたり運動も色々しますが、ジムに行くのは演奏や指揮活動のための体づくりといった面が強いので、趣味とはいえないでしょうし・・・。読書は好きです。フィッツジェラルドやカーヴァーなどのアメリカ文学を若い時に読み、最近ではロシア文学を改めて紐解いたりしています。ただ仕事が増えて以前より活字を読む時間が少なくなってしまっているのが少し残念です。


(編)

最後に、日中の若い人たちへのメッセージをお願いします。


(久)

10代の皆さんには、自分の将来像を明確にもつことは難しいと思いますし迷いも悩みもたくさんあるだろうと思います。音楽の道を進もうと早くから決めていた私自身も10代半ばの頃は色々悩んでいました。だからこそ、毎日を大切に生きてほしいです。目の前のことに真剣に向き合い、一つ一つの課題を着実にこなしていく中で自分がやりたいこと、将来が見えてくると考えています。 それから若い人には、是非、海外に出たり異文化の社会を経験して自分を試してみてほしいと思います。きっと新しい視野や世界を得るきっかけになります。これは声を大にして言いたい!(笑)


(編)

今日はお忙しいなか貴重なお話を頂きまして、ありがとうございました。




久石譲氏

■プロフィール

久石 譲
Joe Hisaishi


国立音楽大学在学中よりミニマルミュージックに興味を持ち、現代音楽の作曲家としてコンサートの作曲、演奏、プロデュースを数多く行う。1982年ファーストアルバム「INFORMATION」を発表し、ソロアーティストとして活動を開始。以後、多数のソロアルバムを生み出し、ジャンルにとらわれない独自のスタイルを確立する。


映画「風の谷のナウシカ」以後、宮崎駿監督の「となりのトトロ」「もののけ姫」や北野武監督の「HANA-BI」「菊次郎の夏」など50本以上の映画音楽を担当し、これまで数度にわたる日本アカデミー賞音楽賞最優秀音楽賞をはじめ、第48回芸術選奨文部大臣新人賞(大衆芸能部門)など、数々の賞を受賞。日本映画には欠かせない存在となる。また、フランス、中国、韓国など海外作品の音楽製作も数多く手がけ、韓国映画「トンマッコルへようこそ」では2005年の大韓民国映画大賞最優秀音楽賞を外国人として初めて受賞、2007年には中国のチアン・ウェン監督作品「The Sun Also Rises」がヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門でノミネートされ注目を集めた。


作曲のほか演奏活動にも精力的に取り組み、毎年行う全国ツアーではピアノソロや、アンサンブル、オーケストラといったさまざまなスタイルを披露。国内はもちろんのこと、近年では韓国・ソウル等でも公演を行い、圧倒的な支持を受けている。2006年には、台北、香港、北京、上海のアジア4都市を回るアジアオーケストラツアーを行い各地で大成功を収めた。
また、2001年には自らメガホンをとり映画監督としてもデビュー、多彩な活動を展開している。


<近年の主な受賞暦>


  2001年   第56回毎日映画コンクール音楽賞、第16回ゴールドディスク大賞“アニメーション・アルバム・オブ・ザ・イヤー”、
      国際アニメ映画協会(ASIFA)主催アニー賞(以上、映画「千と千尋の神隠し」)
  2002年   淀川長治賞(日本映画界に大きく貢献してきた功績に対しての授賞)
  2005年   大韓民国映画大賞最優秀音楽賞(韓国映画「トンマッコルへようこそ」)
    第45回ACC広告大賞“最優秀音楽賞”( サントリーCM「伊右衛門」)
    米国LA批評家協会賞最優秀音楽賞(映画「ハウルの動く城」)


☆公式サイト: http://www.joehisaishi.com/



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