
![]()
![]() |
| この秋に買った本~1 |
|
なぜ、そんなにたくさん本のを買うことになったのかというと、一つには季節の問題がある。十月から十一月は、関西では青空古本市の季節で、大阪の四天王寺、天満天満宮、京都の百万遍知恩寺と青空古本市が続く。関西の青空古本市は、二五年くらい前に京都の若手の古本屋さんたちがはじめたのがはじまりだが、京都の夏の下鴨神社、秋の百万遍の古本市は、年中行事としてガイドブックに載るほどに定着している。大阪でも、数年前から十月には二ヶ所で青空古本市が開かれるようになった。 それに、この時期は、毎年のことだが各古書店からの古書目録もたくさん届く。これは、ボーナスも近いし、大学などの研究機関の予算の執行もピークの時期だからだろう。こうした季節要因で、毎年この時期には、本を買う機会が増えるのだが、今年は、青空古本市でも、古書目録でも、例年になくかなりまとまった量の本を買った。 もちろん、欲しい本がたくさん見つかったのが、一番の原因なのは言うまでもない。しかも、安かった。そして、買った本のほとんどが中国の本だったので、ここに書いてみる気になった。その中には、明朝の本もあれば、九十年代のものもある。もちろん北京とは比べものにならないが、この前に書いた「唱本」を東京で買ったように、日本でも中国の昔の本はけっこう手に入る。 あまり知られていないが、日本で中国の昔の本、とくに民国時代の本を買うと、存外安い。線装木版の漢籍の場合は、骨董的感覚が入るのでいつも安いとは限らないし、木版の挿絵の入ったものは、版画としての商品価値がでてくるので、高くなる場合もある。しかし、一般に中国語の本は、特定の専門店に出てくれば別だが、あまり値がつかない。 日本に古書マニアと呼ばれる人がどのくらいいるのかわからないが、中国語、それも民国時代の本を必要とする人の数は、ずっと限られる。本屋さんの方も、中国語の本=売れないという感覚があるのだろう、あまり高い値をつけない。例えば、戦前の北京の地図でも、日本語版と比べて、中国語版の方が安く値がつけられていることが多い。詳しく内容を検討して値を決める手間をかけても、引き合わないのだろう。 それに、このデフレ状況で古書業界も売れ行き不振で、以前と比べると古書の価格は値下がりしている。在庫を処分しようとしているのか、あまりお目にかからない本が市場に出てくる傾向があるような気がする。 最近では、宋、元などの優れた版本がたくさん影印出版されているし、四庫全書をはじめとして色々なデータベースができて、検索が便利になったから、本そのものが手もとに無くても仕事ができる場合も多い。それでも、まだまだ本の世界は奥深い。データベースではひっかかってこない文献、新刊ではわからないことを教えてくれる本は、たくさんある。 これから何回か、この秋に古本市で買った、中国の本を紹介しようと考えている。プロが見れば、ちょっとびっくりするような本も混じっていると思う。 まず次回は、「増廣海上名花月影大観」からはじめたい。
森田憲司 一九五〇年、大阪生まれ。
現在、奈良大学史学科教授。中国近世の社会・文化を専攻する。 趣味は、書物・地図をはじめとする中国にかかわるもろもろの収集。 |