中国を見る、読む、集める


快客にて

中国を見る、読む、集める もう一回、昔の思い出におつきあいいただきたい。


 私がはじめて中国を訪れたのは、一九七九年のことだった。その時、はじめて「集めた」中国のモノは、成田から乗ったCAのボーディングパスを別にすれば、機内で配られた杏仁露のカンから剥したラベルだった。そして、この旅行中の八日間、紙のものなら、ホテルのマッチ(フフホトの五塔寺マッチとか)、兌換証明、タクシーの領収書と、なんでも集めたことは、これまでも書いたことがある。この時の収穫は、帰国してから写真と一緒にアルバムに貼りこんで、今も残してある。


 その中で目につくのが、食品関係の紙製品で、とくに、日本と違って土地土地で異なっているビールのラベルは、かっこうのアイテムだった。貼りかたがずさんだったし、適当に濡れているから、ビール瓶から剥がしやすかったので、ラベル集めに熱をあげた。


 お読みのみなさんの方がよくご存知のように、北京のみやげ物はすぐにネタ切れになる。日常使われている食料品は、お土産として重宝した。最初はインスタントラーメンだったが、中国ラベルのコーラなども、面白がってもらえた。香辛料やインスタントおかゆなどは、むしろ自分用によく買って帰る。はじめの頃は、味にクセが強いせいか、家族の評判はあまりよくなかったが、最近ではバラエティーに富むようになって、けっこう食べられるものがふえたので助かる。


 さて、今回は王府井大飯店に泊まったが、王府井大街を挟んで向かい側に、最近北京にたくさんあるコンビニの快客(QUIK)があった。入ってみると、日本の、というよりは台湾のコンビニみたいで、店の中を歩くだけで楽しめた。当たり前のことだが、ビールでもなんでもホテルで買うよりよほど安くつくから、部屋での飲み物はここで買い込んだので、滞在中は毎日一回以上足をはこんだ。三年前には北京にこんなにコンビニはなかったし、宿が長富宮だったこともあって、もっぱら賽特で食品類は買っていたのを思い出した。


 そして、今回の持ち帰り用に快客で見つけたのが、電子レンジで温めればできるご飯ものだった。持って帰ったのは、図版にした魚香肉絲飯と梅菜扣肉飯だけだったが、帰ってさっそく食べてみたらまあまあ食べられたので、ここでも時代の変化を感じた。


 ご飯ものはけっこう重いので、最近は空港の計量がうるさくなっていると聞かされて、オーバーチャージ恐怖症になっていた私は、たくさん買う度胸がなく、店で見かけたもの(鶏肉咖哩飯とか)を、全種類買って帰らなかったのが、今となっては残念だ。


 はじめはこの二つも子供の土産のつもりだったのだが、日本に帰ったらけっきょく全部自分で食べてしまった。そして、ラベルが手もとに残って、これが今回の旅行の最後の収穫品となった。前回の図版で編集室のお世話になった「鮮の毎日C」も、快客で売っていたのを見かけて、「の」の字が気になりだしたのだが、飲まずじまいだった。「の」の字が入ったラベルを持って帰らなかったのが、心残りになっている。


 北京にお住まいの方から見れば馬鹿馬鹿しい話かもしれないが、たまにしか来ない身には、こんなことでも結構楽しめる。


森田憲司 一九五〇年、大阪生まれ。
現在、奈良大学史学科教授。中国近世の社会・文化を専攻する。
趣味は、書物・地図をはじめとする中国にかかわるもろもろの収集。


ページの先頭へ戻る