中国を見る、読む、集める


「チャイナドリーム」展

观中国、读中国、集中国

  北京で、1920年代、30年代のポスターをよく見かけるようになったのは、いつの頃からだろうか。ある方から聞いた話では、ヒルトンがロビーのインテリアに使ったのが、北京でのブームのはじまりだという。たしかに、ヒルトンへ出かけたときに、旗袍を着た女性が飛行機をバックに歩く、啓東煙草公司の有名なポスターが柱に飾られているのを見たような記憶がある。たぶん1994年のことではなかっただろうか。

  この連載の32回目(「北京かわら版」時代の1997年)にポスターの話は書いているので、話は重なるのだが、7年前のことなのでお許しいただくとして、このようなポスターを集めた本で有名なのは、香港の三聯書店から出た『都市摩登』と台湾の雑誌『漢聲』の特集「老月暦牌廣告畫」で、どちらも1994年に刊行されている。このあたりが、ブームが表面に出てきた時期なのだろうか。

  どちらの本も特定の収集家のものをベースにして作られているから、その時にはすでにコレクターがいて、集まるところには集まっていたということがわかる。ということは、それより前から市場はできあがっていて、それを私が知らなかっただけのことなのだろうし、おそらく北京よりは上海や香港が本場だったのだろう。

  北京でこうしたものの収集と切り離せないのが潘家園だが、筆者がはじめて訪れたのは、1994年の秋だった。しかし、その頃にはポスターの記憶はない。その後に、ほんの一時期だけ、北京の市場では出現しただけで、たちまち20元30元の複製品ばかりになってしまったようだ。その話が、前の時のテーマだった。

观中国、读中国、集中国

  さて、このような20年代30年代のポスターや、それに先立つ、「チャイナ・トレード・ペインティング」と呼ばれる、広東で作られた外国人向けのお土産用の中国風俗画(これについては、『18−19世紀羊城風物−英国維多利亜阿保特博物院蔵広州外銷画』という豪華な本が上海古籍出版社から去年出た)、あるいは後継者と言える建国後の社会主義建設をテーマとした「新年画」と呼ばれる宣伝画、という一連の流れの上にあるアートを集めた展覧会「チャイナドリーム」が、今日本で開かれている。今回の図版には、その入場券とカタログの表紙を使ってみた。どちらも、ポスターの絵があしらわれている。


  もともと消耗品だし、日中戦争、内戦、文化大革命を経ているのだから、いくら大量生産されたポスターでも、ほとんど残っていないだろうし、まして状態のいい物は珍しいだろう。私には実物をまとめて見る初めての機会だった。

  そして、こうした美人画を描いていた人たちには、どんな運命が待っていたのだろう。図版にも使わせてもらった展覧会の図録に、画家たちの小伝がまとめられている。それぞれのポスターの作者がわかっていて、彼らが建国後の新年画などのポスターの作者へ転身していったことなどは、今回はじめて知った。

  私が行ったのは、神戸の兵庫県立美術館での展覧会だが、ここでの開催は8月29日までで、この号が出るころにはもう終わりかけているが、その後も、9月4日から10月17日までは、福岡アジア美術館、また、10月23日から12月5日までは、新潟県立万代島美術館へと巡回するそうだ。

  ホンモノ、ニセモノはともかくとして、中国では見かける機会が多いこの種のポスターだが、日本ではあまり目にしない。機会があれば是非ご覧になっていただきたい。ちなみに福岡アジア美術館には、国内では数少ないこの種のポスターのコレクションがあるそうだ。


森田憲司 一九五〇年、大阪生まれ。
現在、奈良大学史学科教授。
中国近世の社会・文化を専攻する。趣味は、書物・地図をはじめとする中国にかかわるもろもろの収集。


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