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| 陞官図で遊びたい |
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この号が出る頃はもうすぐお正月だ。そこで、お正月らしい話題を。
私が集めているものの一つに「陞官図」がある。かわら版時代に紹介したことがあるが、中国のスゴロクと思っていただければいいだろう。紅楼夢や西遊記のものもあるが、ほとんどは官僚となって出世していくパターンだ。日本や韓国にも同種の物があることも書いた。このところ目新しいのが見つからなくて買わずにいたが、9月の潘家園で久しぶりに陞官図を2種類買った。一枚はいかにも最近の複製だったが、もう一方の、ここで図版に使った方は、これはちょっと違うぞという気がした。これはどう見ても実用品だ。 どき潘家園や琉璃廠に出回っている陞官図は、民国時代のものならいい方で、古い版木を再利用したか、写真印刷した複製か、飾り物として作られたものばかりだ。しかし、これはどこか違う雰囲気を持っていた。一目見た時から、私は最近民間で作られたもので、実用品だと考えた。
私がなぜそう思ったかだが、もちろん、版形が小さいとか、紙が安っぽいとかいうのも、そういう感じを与えた一因だが、なんといっても簡体字が使用されているのが目につく。簡体字の多くは民間で昔から使われていた略字を利用したものだから、略字が使われているからといっても、必ずしも最近の物とは限らないが、このように徹底して簡体字でできているのは、最近のものに違いない。 それだけではない。この赤いガリ版を、以前にどこかで見た記憶がしてならなかった。この原稿を書いている途中でやっと思い出したのだが、それは、文化大革命中の印刷物だった。文革が収束したころ、文革時代に各地で作られたらしい「毛沢東思想万歳」などと題されたパンフレットが、香港の書店経由で日本の本屋に入荷した。それは、どれもが革命の色である紅色のガリ版で印刷されていた。この陞官図は、それとどこかで通じる風合いを感じさせる。民間で作られ、人々の間で使われたものだと直感したのは、その記憶のせいかもしれない。
では、少しだけでも遊んでみよう。全体図では小さくなりすぎてなにがなんだかわからないと思うので、いちばん最初のスタートの所を拡大してみた。 右の写真が、普通の双六だとサイコロにあたる陞官図用のコマだ。胴は四角くて、四面に徳、財、功、贓の文字が書かれている。徳が一番よくて、財、功と落ち、贓は、むしろマイナスになって戻ることになる。スタートの所では、徳なら案首(首席合格)、財は童生(受験志願者)、功は白丁(一般庶民)、贓は「不上名」だから参加できずにやり直しというところか。次の白丁では、徳が監生(帝国大学生)、財で案首、功は童生、贓は動かず、になっている。このあたりでは、徳で駒が3つ進み、財は2つ、功は1つ、贓は3つバックらしいが、本格的に官僚組織の部分に入ると、駒は、実際の官僚の出世ルートに応じた複雑な動き方をするようになる。 本式の陞官図はもっと複雑なルール(点棒やお金のやり取り)があったりして難しいが、これなら非常にシンプルで、すぐにでもやれそうだ。 値段は、たしか3枚で 50元、ささやかなお土産になった。 森田憲司 一九五〇年、大阪生まれ。
現在、奈良大学史学科教授。 中国近世の社会・文化を専攻する。趣味は、書物・地図をはじめとする中国にかかわるもろもろの収集。 |