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| 飾り物の変化 |
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私が正月の飾りつけに興味を持ったのは、伝統的な木版画の年画への関心がまず第一のきっかけだった。それと、昔の文献に書かれている正月行事を、モノの方から確認したかったこともある。“文献”と“モノ”を重ねあわせたいというのは、私の“中国モノ”集めに共通するきっかけだ。 実際に集めはじめたのは、30年前の台湾だったが、すでに木版の年画は民芸品になってしまっていて、印刷されたものばかりだった。多色刷り印刷とは言うものの粗末なものだったし、図柄も、「加冠」、「晋鹿」のような伝統的なものがほとんどだった。しかし、その頃の私は、文献に載っているものが目の前にあるだけでうれしかった。 そして、みるみる印刷技法もデザインも変わっていった。その多彩さ、そして奇抜さに、私の興味は今風の正月飾りにも広がった。正月の飾りには、人々の祈願がこめられているし、なにせ縁起物だから、価格的に可能だったのだろう、その時代時代の技術がふんだんに使われている。 私の印象では、デザインではパイナップルの登場がまず目に付いた変化だった。「鳳梨」がなぜお正月の縁起物に人気があるのか、「鳳」だけではなっとくできず、いまだ理由がわからない。同じ果物でも、ミカンがたくさん登場するのは桔子(=吉)でわかるのだが。ご存知の方はお教えいただきたい。 そして、世界のキャラクターが登場するようになる。写真が小さいのでご覧になりにくいかもしれないけれど、店先の飾り物や紅包には、伝統的な瓢箪や財神、さらに金豬と、おめでたいものがずらりと並んでいるが、そこにミッキーやスヌーピーをあしらったものが混ざっている。 もう1つの写真はけっこう大きな飾り物で、横幅が6,70cmはある。正月に付き物の梅の花や紅籠燈、「恭禧発財」や「吉星高照」の文字のほかに、桔子や鵲(=爵)が配されていて、全体としては伝統的な図柄の飾り物なのだが、そこにキティーやメロディーが共存している。どちらも、台北の廸化街の店頭風景だ。 左側のキティーの顔にラベルが重なっている、写真が小さいので、値段は見えないと思うが、90元だから、300円ちょっとだ。 印刷技術や材料のことは、私にはよくわからないが、どんどん色鮮やかで豪華になっていった。30年前は、多色刷り印刷といっても、日本で言えば昔の安物のカレンダーやチラシのような、色ずれの目立つものが多かったのが、きれいな印刷になっていった。材質的にも、金色が増えたのはもとより、光を反射する素材がたくさん使われていて、めでたさが強調される。だから、日本へ帰って今回の写真をチェックしてみると、ストロボがはね返されていてデザインがよくわからない写真が、いくつもあった。 今回もう一つ気が付いたのは、“立体化”とでも呼びたい傾向だ。キティーの飾り物を見ると、キティーや鵲、梅の花は、みんなスポンジで土台に貼り付けられている。かなり立体的な飾りつけなのだ。今回買った中には、「恭喜発財」と書いた紙を持った財神があるが、これも、冠の飾りから、如意や靴の先っぽまで、出っ張っている箇所は、みんなスポンジで貼り付けてあって、かなりの立体感がある。こうしたたぐいのものは、以前は見なかった。しばらく台湾へ行っていなかった私には、いつ頃からの現象なのかわからない。 まだ臘月や春節を中国で経験したことのない私には、正月の縁起物が同じような状態なのかどうか知らないし、南と北で事情が異なるかもしれない。ここに書いたようなことは現地にお住まいの本誌の読者のみなさんにとっては、なにを今さらということかもしれないが、私には新鮮で刺激的なできごとだった。 森田憲司 一九五〇年、大阪生まれ。 現在、奈良大学史学科教授。 中国近世の社会・文化を専攻する。趣味は、書物・地図をはじめとする中国にかかわるもろもろの収集。 |