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先月の続きで、売値の違う4枚の地図のどこが違うかというお話。話はちょっとややこしい。
1月末の北京。天安門東駅の地下道で、「地図一塊!」という声が聞こえた。
叫んでいるおじさんを見ると、持っている地図は、おなじみの中国地図出版社の天安門広場の国旗掲揚台が表紙になっている地図で、2008という文字も見える。
昔、このコラムで「地図両塊」という話を書いた。今度は、1元だ。もちろん、即座に買った。そのときには、まだ、08年版を手に入れてなかったから、その収穫だけで喜んで、紙質が落ちていたり、表紙の刷り具合が違うことは、あまり気にしなかった。
その日は、故宮からの帰りに、天安門と故宮との間の通路でも「地図1塊」を買った。その後も、見かけるたびに買っておいたが、どれも同じものだった。3月にも北京に行った。今度は、前門のところで、「地図一塊!」にでくわした。また買った。
さて、先月掲載の3枚の写真に戻る。
写真の左から、1つ目は、白紙坊の地図出版社門市部で3月に4元で買ったもの。2つ目は、崇文門東北角の新聞売りから3月に3元で買った。3つ目が、問題の1元のもの。前回も書いたように、1元のは、名前も違って「北京交通旅遊図」だし、中の地図も違う。裏を見ると、当然のことながら書号が違う。不思議なのは、出版元が中国地図出版社になっているのに、なぜか住所が違うことだ。このほかに、普通の「北京交通遊覧図」の2月の版を、建国門の地下鉄のホームで2元で買った。
まず、新聞売りから買った3元の方だが、中国地図出版社出版で、名前も書号も同じだが、「北京首郵報刊亭有限責任公司」の文字とマークが、奥付に刷り込まれている。「2008年1月第1版 2008年1月北京第2次修訂印刷」とある。普通の「北京交通遊覧図」は、2007年6月第3版だから、ここも違っている。地図本体を地図出版社で買ったのと見比べると、似てはいるが、やはり違う地図だ。
つまりは、報刊亭や露店で売るための別の「北京交通遊覧図」が存在するということだ。こういう地図は、これまで見たことがない。「2008年1月第1版」と書かれているから、最近はじまったのだろう。
「北京交通旅遊図」にもどると、まったく別の地図だが、表紙の写真が使い回しされているということなのだろう。1月に買ったのは「2008年2月第5版第103次印刷」、3月に買ったのは「2008年3月版第1版第128次印刷」、印数の最後の数字は、1月が19500000、3月が19800000。裏の広告は、どちらも中国国際旅行総社だが、内容は違う。地図本体はというと、私の眼力はこのごろすっかり衰えていて、よくわからない。確かなのは、広告や公共汽車の路線案内が違っていること。地下鉄の路線図の大きさも変わっている。
謎は、なぜ1元なのかだ。ちゃんとした地図なのだから、経費もかかっているはずだ。いくらなんでも1元で売らせて儲けがあるとは思えない。どなたも思いつかれるだろうが、広告が問題なのだろう。地図全体が巨大なチラシだと思えば、広告収入があれば、1元でも売り上げがあるだけましかもしれない。
そう言えば、1月に故宮へ行ったときに驚いたのは、故宮の中にチラシ配りがたくさんいた。あんなにいるのに、私には誰も渡そうとしなかったが、捨てられているのを見ると、「北京交通旅遊図」にくらべれば小さいが、これにも北京の地図や故宮の案内図が片面に刷られていた。
森田憲司 一九五〇年、大阪生まれ。
現在、奈良大学史学科教授。
中国近世の社会・文化を専攻する。趣味は、書物・地図をはじめとする中国にかかわるもろもろの収集。
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