Q:「愛は売っていないのですか?」
A:「どうやら、愛は非売品のようです。もしどこかで販売していたとしたら、それは何かの罠かと思われます。くれぐれもご注意ください。」
――5年前、このような軽妙洒脱な「ひとことカード」で大きな話題となった「生協の白石さん」が、にこやかな顔で演壇に立った。礼儀正しい白石さんの、魅力いっぱいの講演だった。
東京農工大学の生協職員だった白石さんは、様々な仕事をこなす一方で、いつの頃からか学生たちからの質問に対して回答を書くようになった。どんなに意地悪でひねくれた質問でも差別することなく、ユーモアたっぷりに温かい言葉をつづって、学生たちを感動させた。彼の回答を学生たちがネット上に公開したことから、雑誌やテレビなどが競って「ひとことカード」について報道した。ついには『生協の白石さん』という書籍が講談社より出版され、93万冊のベストセラーとなった。東京農工大学では、白石さんを広報大使に任命した。
日本中に白石さんのファンが増え、さらには海外にまで影響を広げている。「勝ち組」と「負け組」に二極分化したといわれるような時代に、なぜ、ごく普通のサラリーマンが人々の心を感動させることができたのだろうか?あれから5年、白石さんは演壇で“心を伝える秘訣”について披露してくれた。
まず第一に、誠実に対応すること。どの意見に回答するときも、情熱を込めて対応する。「ひとことカードに書いて意見箱に入れたということには、誰かに読んでほしいという学生たちの気持ちが表れています。こうしたことが、心のコミュニケーションの最も基本的な条件ですね。」
第二に、ちょっとしたことを書き加えること。回答するときに最も重要なのは、真剣に、ユーモアを交えて書くことである。そして事実を書いた後で、どうでもいいようなことを一言書き加える。実際にはささいなことであっても、大きな作用があって、思いがけない効果が生まれることがある。
第三に、程よく答えること。ひとことカードの紙幅は限られており、200字程度を超えることはできない。程をわきまえて、大学生協の立場から短く答えればよく、深く追求しすぎないのがよいという。
気楽で楽しい2時間があっという間に過ぎた。白石さんと別れの握手をした瞬間、私の心にひらめいたことがあった。かつての「ひとことカード」と、今世界中を席巻している「ツイッター」は、人と人との交流の手段として、共通点がかなりあるのではないだろうか!一方は「質問に答える」ものであり、他方は「自由に発言する」ものである。しかし白石さんの教えてくれた“心を伝える秘訣”をマスターすれば、心と心の交流は困難なものではなくなるのではないだろうか。――これが恐らく、今回の講演から私が得た最大の教えであろう。
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