週刊「心連心」マガジン


「人」世相・若者の生き方

「一駅族」の気持ちを体験する

地下鉄が駅に到着する前にふと目に入った「中吊り広告」の中の気になるテーマに引きつけられ、いつもと違う朝を過ごすことになった。この日は、ごく普通の初夏の朝で、サラリーマンの私は会社に一直線に向かうところだった。私がいつもの習慣を変えてみようと思ったのは、いくらか時間に余裕があったためだけではなく、「静かなブーム、『一駅族』激増中!」というタイトルに心を奪われたからであった。


六本木最大の交差点。空気は梅雨特有の湿気を帯びていた。夜になれば、ネオンの瞬きと贅沢とが交錯する「不夜城」となるが、さすがにこの時間には街もまだ寝ぼけまなこだ。たまに数台の豪華な車が走っていくが、夜にはよく見られる胸元や腕をあらわにした金髪碧眼の女性たちは見られず、想像できないほどの静けさに包まれている。


こんなにゆったりした気分は、久しぶりである。iPhoneのGPSに案内されて、よく清掃された街をゆっくり歩く。さあ、東京の早朝の表情を観察してみよう。エスカレーターで66広場へと上ると、六本木ヒルズの巨大な蜘蛛の彫刻の間に、雲をつくように聳え立つ森タワーが見える。閑静な住宅街の大使館群の間を抜け、木々がうっそうと茂り、自然に回帰するような有栖川宮記念公園に入る。青木坂を上り、天現寺で江戸時代の俳聖、松尾芭蕉の句碑を鑑賞する。


涼しい薫風が心地よく頬を撫で、かすかな快さを届けてくれる。これは本当に特別な散歩である。何も予定のない休日のように、心にまかせて歩き続けるというわけにはいかないが、気持ちはかえって穏やかでゆったりしている。休日ごとに鮮やかな色のスポーツウェアを着て、皇居の周りをジョギングするビジョガーたちとは異なり、通勤時間を上手に使って気軽に楽しく散歩することで、デスクワークの運動不足を解消し、健康的に痩せられ、心身を養うことができ、さらには新鮮な情報も吸収できる。まさに、一石三鳥の素晴らしさである。


広尾公園の外側に沿って歩き、日仏会館を過ぎると、美味しいレストランが並ぶヨーロッパ風の恵比寿ガーデンプレイスと麦酒記念館が、朝日の中に輪郭を現してくる。宵の時間のフランス風のロマンチックな街灯のイメージに比べて、今見る恵比寿は爽やかな日本の美を滲ませている。太陽が輝き、空に残った月が、ますます明るくなる空の中で霞んでいく。エンジンの音が都市の交響曲を奏で始め、人と車の流れが動き出し、喧騒の街が現れる。まるで見えない手が、東京の巨大なカレンダーを1枚めくったかのようだった。



PHOTO BY YAO YUAN

●「一駅族」が増加中
http://career.oricon.co.jp/news/66703/full/
「一駅族」の気持ちを体験する
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