ゆったりと時間の流れる多摩センターで、美沙は学生生活最後の夏を過ごす


佐藤 美沙(大学4年生)東京・多摩センター育ち


美沙ちゃんは、都内の大学に通う4年生だ。

とても礼儀正しく、ふんわりと相手を包み込むような雰囲気を持っている。

ゆっくりとした話し方からはとても想像できないが、一度決めたらやり通す意志と、曲がった事は許せないという強い正義感の持ち主。

そんな彼女が心を許せる街、それが思春期まで過ごした多摩センターだ。


多摩センターとは、東京都多摩市にあるニュータウン(※1)で、都心から西に30キロ程離れたところに位置している。緑が多くゆったりとした時間が流れ、駅近辺には子供向けの娯楽施設もあるため、家族連れが多く遊びに訪れる。


美沙ちゃんは、この多摩センターに中学生の頃まで住んでいた。

引っ越してしまった今でも、一番好きな街だという。

「多摩センターに来るとホッとするんです。帰ってきたな〜って感じがします」。

そこに彼女にとって大切な時間が流れているからだ。


この街に彼女が小学4年生の頃から通い始めた絵画教室がある。そこで2人の親友と出会った。

教室を営む先生夫婦とも仲がよく、今でも3人で家に遊びに行くことがある。

「先生たちには就職についても相談するし、親に話しにくいことも相談します。たとえば、恋愛の話とか」。

その絵画教室は小学生向けの教室だったが、3人は中学、高校と通い続けた。大学入学と同時に通うのをやめたけれど、今でも教室が主催する夏のキャンプにボランティアとして参加している。小学生たちのお世話をするのだ。


akane

「わたしは2人の親友と今でも多摩センターでよく遊びます。この前も3人で朝の5時までマック(マクドナルド)にいました。話が全然つきなくて!」

美沙ちゃんには2歳年下の妹がいて、いつも心のどこかで「お姉ちゃんなんだからしっかりしなくちゃ」と思い続けてきたのだそうだ。親友たちに会うときは、そんな意識も無くなり、完全にリラックスした気持ちになれるのだろう。大好きな親友や絵画教室の先生夫婦とのひと時は、彼女にとって心から安心できる大切な時間なのだ。


美沙ちゃんは現在、大学でダンスサークルに参加している。ダンサーはそれぞれが自己を表現するので、みんな自己主張が強い。それでも一つの作品を創るにあたって、全員がまとまることが必要だ。

「サークルのメンバーは友達と言うよりも、戦友といった感じです。よくぶつかります。本当に、大変」。

美沙ちゃんも含めてみんな本気だからこそ、妥協できないのだろう。

「でも人間関係で疲れたとしても、わたしを必要としてくれる親友たちがいてくれるので、思い切り頑張れます」。

今だけでなく小学生の頃から、彼女を精神的に助け続けてきたのはいつも親友たちだった。



美沙ちゃんは来年3月で卒業し、4月からは社会人になる。

同級生たちが就職活動に忙しいこの時期、彼女はつい最近、ネイル関連グッズを取り扱う企業への内定を得た。4年間勉強している、得意の韓国語が決め手となったそうだ。


就職先が決まってホッとしていながらも、社会人になるにあたり、初めてのことに不安もある。

「仕事も人間関係も楽しくやっていけるか、ちょっと心配です」。

曲がった事が嫌いな分、仕事には本気で取り組んでいきたい。でも自分に向いているだろうか。考える程に心配事は増える。

「ただ、かわいいものが好きだし、韓国語を活かせるかもしれないと思うとすごく楽しみです」。

その企業は海外との取引があるらしく、彼女はゆくゆく韓国との取引に関わる仕事もしたいと思っている。意志の強い彼女、目標は明確だ。


akane

8月、今年もまたいつものように絵画教室のキャンプに行くという。今年で13回目の参加だ。きっと例年通り流しそうめんをしたり、小学生と遊んだりして過ごすのだろう。


「友達とみんなで行けるキャンプはきっと今年が最後なので、楽しんでくるつもりです」。

学生生活最後の夏。

来年の夏はもう社会人だ。



このコーナーでは東京近郊に生きる若者を通して日本を紹介していきます。

次回も、お楽しみに。



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※1 ニュータウン 都市の郊外に開発される市街地のこと



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