智世の東京ライフは、恵比寿から始まった


オカダ チヨ 岡田 智世 (23) 静岡県出身


智世にとって東京と言えば、恵比寿だ。

静岡から上京してきた当時通っていた、美容系の専門学校や、長く勤務しているアルバイト先が恵比寿にある。

彼女は今日も自宅から自転車に乗って丘をのぼり、キラキラした恵比寿ガーデンプレイスに向かう。

そこにはおしゃれなカフェや話題の店、オフィス、映画館や美術館などがあるが、その周りは住宅街であり、緑に囲まれている。

デートをしているカップルや、ジョギングをする外国人、大きな犬を連れて散歩している人、カフェで読書をする人などがいて、ここを歩けばまるで、自分自身が映画の中にいるような気分になる。

また少し離れた恵比寿駅の方は、庶民的で下町の良さが残っており、小さな雑貨店や、隠れた名店などが点在している。

恵比寿はバランスのとれた、大人の街なのだ。

智世は恵比寿のそんなところを気に入っている。



「恵比寿に来るとね、“よしやるぞ!”って、気持ちになるの!」

エネルギー溢れる彼女は、いくつかのアルバイトを掛け持ちしているそうだ。花嫁の介添人、テレフォンオペレーター、モデル、女優。

さらにここ1、2年で資格を3つも獲得した。花嫁の介添人の仕事に活かそうと受けた接遇検定を始め、アロマテラピー検定、環境カオリスタ検定だ。

それだけではなく料理教室にも通い、短期間で先生のアシスタントとしての仕事もできる程になったと言う。

 

なりたい自分になるため、彼女は目標を決めたら体当たりで突進していく。

「わたし30代に憧れてる。やりたいことやってる人はかっこいい!だから、今できることは、今の内にできるようになっておきたい」。

三人姉妹の末っ子であるという智世は、いつも年上の誰かを目標にしてきたのかも知れない。



現在、智世には年の離れた彼がいる。

「長く付き合っているけど、今でもずっと人として尊敬してる。厳しさを持っている人だから、学ぶところが多いよ」。

大人びた雰囲気を持つ彼女だが、小さな女の子のように少し恥ずかしそうに言った。



実は彼女は中学生の頃からずっと恋愛に対して依存していたところがあったと話してくれた。

メイクも髪型もファッションも相手の趣味に合わせていたし、少しでもメールが返ってこないと異常に不安になったりもしたそうだ。



そんな彼女にあるできごとが起こった。彼との遠距離恋愛だ。

「昔からずっと強くなりたいと思ってきたけれど、恋愛に対して余裕が出てきたのは、彼と遠距離になってから。いいきっかけになったよ」。

彼には彼の好きなように生きて欲しいし、自分自身が彼の年になった時には彼を超えるくらい成長していたいと、智世は言う。だから彼を追いかけたりはせず、東京で自分が今できることに対して真摯に向き合っているのだ。


その一つが、演じることだそうだ。

彼が海外に行ってしまい、一人になった智世に、あるカメラマンから「一緒に作品を創らないか」という誘いがきた。その作品は今まで学んできた、演じることを実践するような内容だと言う。

「演じることは人間の内側を見つめ、表現すること。役を通して自分を見つめるの。そして芸術は、真実でなければ人の心には響かない」。

これまで様々な資格を取ったり、たくさんのアルバイトをしたり、恋愛相手に合わせたりと、常に周りを意識し、外側を強固にすることに尽くしてきた彼女だが、今、作品を通して自分の内面に本当に目を向け、磨き始めたのだ。

「生まれてきた意味。わたし、それをずっと探してる。最近分かったのは、自分の進む道が芸術みたいにピュアなものであれば、その答えに絶対たどり着けるということ」。

それが、作品を創ることが今の彼女の生活の中心になっている理由だそうだ。



だが彼女は、一生演技を続けることはないかもしれない、と言う。

「職業や肩書きには執着していないの。自分の心に、信念に、執着してる。常に自分の心に偽りのない状態で生きていきたい。」

彼女の周りには尊敬できる大人たちがたくさんいるそうだが、彼らのように彼女は意味のある人生を送りたいと思っている。

「身近な人が輝くのを見るのが好き。自分だけじゃなく、誰かの為になることをしたい」。

今はまだ自分に何が出来るのか、自分が何をすべきなのかは見えていない。だからこそ、尊敬できる大人たちの話に耳を傾け、興味があることはなんでも一生懸命に学んでいるのだ。




キラキラしたものが大好きな智世。

かっこいい大人になることに憧れている智世。

だがもうすでに、彼女の素直さと、突進していくエネルギーが彼女を輝かせていることに、彼女はまだ気付いていない。




このコーナーでは東京近郊に生きる若者を通して日本を紹介していきます。


次回も、お楽しみに。




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