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参加者インタビュー

インタビュー 心連心プログラム修了生の「日中交流の担い手」として成長した様子を取材します。

[オンライン交流会] 相手を知ることは、自分たちについても知ること。オンライン交流会を活用した新たな学びのかたち

 延暦23年(803年)、弘法大師空海は遣唐使に随行し唐の都長安、今の西安にわたった。そこで真言密教を学び、帰国後、高野山を開いた。

 それから約1200年後、新型コロナウイルス感染症の蔓延で日中の往来が途絶えるなか、高野山のふもとに位置する和歌山県立橋本高等学校と、中国の西安外国語大学附属西安外国語学校のオンライン交流会が、2020年12月に行われた。

 テーマは「観光とSDGs」。交流会を担当した橋本高校の祭貴先生と、参加した生徒たちに、当時を振り返っていただいた。

オーストラリア留学の中止から日中オンライン交流へ


写真を拡大取材時の様子

 オンラインの交流にも、「めぐりあわせ」というものがあるのかもしれない。

 日中交流センターのマッチングで、橋本高等学校と西安外国語学校のオンライン交流が決まったとき、橋本高校では2年生のオーストラリア留学が、新型コロナウイルス感染症の流行のため、中止になったところだった。

 生徒たちはすでに、日本文化などを紹介する英語のプレゼンテーションを作成し、準備万端整えていた。それが中止となってしまった。悔しい思いをした生徒たちは、心機一転、西安外国語学校とのオンライン交流に参加することになったと言う。

 「観光とSDGs」のテーマは、交流会を担当した祭貴先生の発案だ。SDGsとは、2015年に国連サミットで採択された「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、2030年までの達成目標17項目が掲げられている。今、まさに注目のテーマである。

 「生徒たちは、『総合的な学習(探究)の時間』で、SDGsについてアジアのいくつかの国の事情を調べるという取り組みを行っていました。そのなかで、和歌山大学観光学科の先生からお話をうかがう機会があり、観光がSDGsに貢献していることを、私自身もはじめて知ったのです」と、祭貴先生は話す。

 世界的な目標でもあるSDGsについて、日中で意見交換をできれば、有意義な交流になるのではないか――。

写真を拡大交流時の様子

 祭貴先生はそう考えた。学校の近くには世界遺産の高野山もあり、その高野山は、西安と非常に所縁がある場所だ。

 生徒たちは、まず、高野山にフィールドワークに行き、西安と空海のつながりを学習するところから、準備を始めることになった。

いつか来日できるようになった時のためのバーチャルツアー


写真を拡大高野山へのフィールドワーク

 交流会まであまり時間がないなか、生徒たちは、課外授業の時間を利用して、高野山の精進料理を体験したり、講師から高野山の観光やSDGsを学んだり、オーストラリア留学のために準備したプレゼンテーションを、中国との交流用に作りなおしたりしたそうだ。

 「もう少し、中国や西安の基本的なことについても、事前に勉強をできたらよかったんですが……」と、祭貴先生は振り返る。

 橋本高等学校はこれまで、山東省の学校と10年以上にわたり姉妹校交流を行ってきた。また、日中交流センターの「心連心:中国高校生長期招へい事業」の受入れ校でもあり、オンライン交流会に参加した生徒数名は、コロナ禍で帰国した心連心の中国人留学生と、半年間、クラスメートだったこともある。

写真を拡大高野山へのフィールドワーク

 それでも生徒たちにとって、中国は、少し遠い存在だった。

 2回行われたオンライン交流会の初回は、特に緊張したと生徒たちは話す。当時はまだ、学校でオンライン授業が普及する前だったので、機器操作もぎこちなくかった。パワーポイントをパソコン画面に表示して、発表をしている途中で音声が途切れるというトラブルもあったそうだ。

 どんな発表をしたかたずねると、あるグループは、中国からの来日を想定し、関西国際空港から高野山まで、バーチャル体験できるようなプレゼンテーションをしたと言う。

写真を拡大高野山へのフィールドワーク

 また、SDGsに関連して、地元の食材を地元で消費する地産地消の試みを紹介したと言う生徒、「渋さ知らズ」という知る人ぞ知る日本のビッグバンドを紹介した生徒、さらには手巻き寿司やちらし寿司など、日本のバラエティに富んだ寿司文化を紹介したと言う生徒など、それぞれが、中国の生徒たちに楽しくわかりやすく伝えるための工夫をこらした様子が伝わってきた。

 ユニバーサルスタジオジャパンを紹介したと言う生徒は、「和歌山には高野山以外ないと思われたらあかんと思って、USJに建設中のスーパー・ニンテンドー・ワールドを紹介しました」と話す。

 なぜ、完成前のアトラクションを紹介したか言うと、「日本に来られるようになったときに、楽しんでもらえたらいいなと思ったから」。その言葉がじわりと胸に響く。

現地の生の声を聞くことで得られた気づき


写真を拡大取材時の様子

 一方、西安の生徒たちからは、クイズ形式を取り入れた西安の紹介や、二泊三日の西安旅行プランの提案などがあり、日本ではなかなか知ることのできない現地の様子をリアルに感じる機会となったようだ。

 「兵馬俑に行ってみたいと思いました」と、生徒の一人は話す。

 「世界史の勉強をしているんですけれど、資料集などで見たものとは違う画像を見せてもらって、しかも現地の人が紹介してくれているので、新しい発見があったり、いろいろな視点で見ることを学びました」

 別の生徒は、「観光スポットの紹介のなかで、観光資源の活用法が日本と違っていてとても面白かった」と言う。

 「日本は昔の状態を完璧に維持しようとする傾向がありますが、それに対し、中国は噴水を作ったり、ドローンを使ってイルミネーションを演出したりしていて、観光資源の活用や宣伝方法に違いがあると感じました。これはこれで、有効な方法の一つではないかと思います」と、なかなか鋭い。

 他に、どんなことが印象に残ったか。

 真っ先に手を挙げた生徒は、「グループトークで卓球選手の話題で盛り上がったこと」と話す。実は話題づくりのため、事前に中国のことも自分たちで調べていた。有名な中国人卓球選手を検索すると、リオ五輪金メダリストの丁寧(ディンニン)選手の名前が挙がった。

写真を拡大交流時の様子

 そこで、グループトークの際、「丁寧選手を知っているか」と聞いてみたところ、これが大当たり。西安の生徒たちも「知ってるー―!」と大変盛り上がり、いろいろ説明をしてくれたと言う。ただ、日本のK1の武尊(たける)選手の名前を挙げたときには、先方はぴんとこなかったようで、話もあまり広がらなかったと、生徒は苦笑した。

 それ以外にも、勉強時間や宿題のことなどは、高校生ならではの共通の話題で、お互い、興味が尽きなかった。また、「鬼滅の刃」で盛り上がったというのは、世界共通のことかもしれない。

中国との交流から気づいた自分たちのこと


写真を拡大取材時の様子

 中国との交流ということで、何か気づいた点があったかとたずねると、一人の生徒が手を挙げた。「民間レベルの交流を大事にしていくことは、やはり変わらず大切なのではないかと気づきました」と言う。

 「いまの日中関係はどうしてもよいとはいえないし、日本の報道を見ても、反中や嫌中的な感情の高まりを感じます。だからこそ、民間の交流は重要ではないかと考えました」

 あるいは、中国を少し身近に感じたと話す生徒もいた。

写真を拡大交流時の様子

 「これまで、中国に行ったこともあったのですが、そのときは表面的というか、同世代と接することもなくて、交流する前は、中国がどんなところか、どんな生徒がいるかよくわかりませんでした。でも、西安の生徒たちとつながって、現地のことを知ると、中国のことも少しわかってきたかなと思います」

 もう一人、手を挙げた生徒は、中国の生徒の英語レベルに刺激を受けたと話す。

 「僕は英語にわりと自信があるほうなのですが、中国の生徒や、以前、交流したことのある台湾の生徒が、同じ年とは思えないくらい英語が上手で、発音も文法も、会話の慣れ具合も各段にレベルが違っていました」

 今回、取材に参加できなかった生徒からも、
「グループトークの時、自分から積極的に話を切り出せなくて、中国の生徒の積極性を見習いたいと思った」
「オンライン交流にかぎらず、社会で生活していくうえで、日本語で言いたいことが伝わらないときに英語で伝えられるような語学力を身につけたい」
「中国と距離が近いので、とても文化が似ているということに気づいた。これはオーストラリアでは感じられなかったことではないか」
などの感想が寄せられたそうだ。

2021年度の交流テーマは「パンダとSDGs」


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 「今、こうして生徒たちの話を聞いてみると、みんな、たくさんの学びがあったのだと感じます」と、祭貴先生がしみじみ語る。

 「さきほど、民間交流が大事という話が出ましたが、実際、高校生同士が話をすると、アニメや勉強のことをおしゃべりしたりして、お互い、本当に普通で、何ら変わりがありません。そういうところから、親しみを感じられたのではないでしょうか」

 実はもともと、それぞれの発表のあと、質疑応答の場面では、テーマについて意見交換しようと考えていた。しかし意外にも、中国の生徒からは身近な質問が多く、「みんな、緊張の糸が切れたように感じました」と、祭貴先生。

 生徒の中には、テーマで討論することより、話ができたことに感動し、「現地の高校生とリアルタイムで交流することで、その国の考え方が直に伝わり、異文化交流なるものを直接感じることができた。初めての体験で、非常に楽しかった」と話す者もいたそうだ。

 実は、橋本高校は引き続き2021年10月から、日中交流センターが実施する令和3年度の「日中高校生対話・協働プログラム」において、新たに1、2年生を対象に、成都外国語学校とのオンライン交流をスタートしたところだ。

 これもまた、ある種の「めぐりあわせ」と言えるだろうか。パンダで有名な和歌山のアドベンチャーワールドは、成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地と、長年にわたり共同繁殖研究を行っている。そこで、今年度のテーマは「パンダとSDGs」。

 参加する生徒たちは、アドベンチャーワールドで、中国のつながりやパンダについてレクチャーを受け、アドベンチャーワールドが取り組んでいるSDGsについても学ぶそうだ。

写真を拡大交流時の様子

 「今年度の参加者も、いろいろな交流を楽しみたいと思っている生徒たちで、今後の交流が楽しみです」 と、祭貴先生は言う

 日本と中国の高校生の往来が回復するまでには、まだしばらく時間がかかるかもしれない。そうしたなか、オンラインという交流の場は、相手を知ることはもちろんのこと、自分たちが暮らす地域や社会についても学び、多様な視点で世界に目を向ける良い機会となりそうだ。

 取材・文:田中奈美 取材日:2021年10月14日

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